一筋の光、降り注ぐ光。

人生はなかなかに試練が多くて。7回転んでも8回起き上がるために、私に力をくれたモノたちを記録します。

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750冊の本とお別れする日

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クリスマスのイルミネーションに街が輝く12月、華やかな雰囲気の漂う師走である。一年で最も忙しいこの時期に、我が家は引っ越すこととなった。目下、鋭意断捨離中である。

 

今後の暮らしについて家族で迷い悩む日が続いていたのだが、一旦引っ越しを決意するや、不思議なことに一気に気分が高揚し、体が動いた。家族が皆、この新しいプロジェクトに向けて意欲的に取り組んでいる。

 

さて、何を捨てて何を残すか、という判断をするのはなかなか骨の折れる仕事だ。処分すると決めたものも、リサイクルショップに持って行けそうなもの、テレビなど家電リサイクル対象機器としての手続きが必要なもの、粗大ごみ、不燃ごみ、可燃ごみ、と分けなくてはいけない。特に粗大ごみは自治体で引き取る日が決められており予約が必要なので、早めに判断しなくては。粗大ごみで出すつもりだったけど、リサイクルショップで引き受けてくれそうだ、とわかることもある。

 

家中をひっくり返している中で、ピアノ専門の引き取り業者がやってくるし、引っ越し業者数社が見積もりにやってくる。引っ越し先ですぐに必要になるものを買い足さなくちゃ。契約に必要な住民票を取りに行かなくちゃ。ああ、本当に忙しい。仕分け作業に手間取り、荷造りにはまだ手も付けられない。

 

今の部屋には結婚したときから住んでいるから、26年半いたことになる。当初は家具もモノも少なかった我が家だが、さすがにこう年月がたつと恐ろしいことになっている。中でも一番の懸念は「本」だった。

 

夫も私も出版・印刷関係の仕事をしてきたので、そもそも仕事関係で本が集まってしまう傾向があった。その上、二人とも本が大好き。夫にいたっては「本を買うのが趣味」と開き直っていたくらいで、多分読まれないままホコリをかぶり日に焼けてしまった可哀想な本もたくさんあったろう。

 

しかし「新しい場所で新しい生活を始めよう」と決めたのだ。これからはもっとシンプルにコンパクトに暮らしたい。どうしても手放せない本だけを残して、後はみんな処分しよう、と夫婦で決意。ブックオフさんに引き取りに来てもらうことになった。

 

やってきた担当者さんは、本棚を見るなり「これは1回じゃ無理ですね」と苦笑した。その日は半量を箱に詰め、残りの分の空箱を少し多めに置いて帰って行ったのだった。

 

次回来てもらうまでに、残りを箱詰めする。その作業を夫がやってくれた。独り言が面白いように出てくる。


「ああ、これはいい本だったなあ、でももう読むことはないな」
「読みたくなったときにまた買ったり借りたりすればいいんだよ、電子書籍もあるし」
「これは好きな人にはすごく価値がある本だから、そういう人の元に届くといいなあ」

 

欲しくて買った本である。手放す作業はとても心がくたびれたことだろう。でも、そうなのだ、本に気持ちがあるのなら、きっと読んでもらえる人の元へ行きたいだろう。だから、この先読むこともないと思うのなら、どんなに思い入れがあって買った本でも手放す方がいい。その方が本も喜ぶ。

 

人生が広がっていく若い時代は、モノを所有するための時間にもスペースにも、余裕があったのかもしれない。しかし、もう広げていく年頃は過ぎたのだと思う。これからは凝縮し、必要最低限を目指す方が自分も家族もラクだし、豊かな気持でいられるのだ。

 

モノが増えればメンテナンスも増える。それがまず億劫に思える。放っておけばモノは劣化し、傷み、ほこりや錆びに晒される。今回の引っ越し準備でつくづく思い知ったことだ。モノが多いって、ホント、大変!

 

そもそもモノを買うにはお金もかかるし、場所もとられる。いずれ処分するときには、お金がかかったり面倒な手続きが必要になってくる場合もある。単純に「欲しいから買う」のではなく、最後まで面倒を見る覚悟を持って買うべきだろう。そう、ペットと同じだ。これからは、何かをひとつ買うときでもじっくり考えてからにしよう、本当に。

 

それにしても、本に限らず写真とか日記とか絵とか、次から次へと懐かしい品々が出てくるものだ。片づけながら、私たちは何度歓声をあげたことだろう。あの頃はこういうことに興味があり、こういう分野に一生懸命になっていたんだ、といちいち感慨深い。そして、自分で納得してそれらと決別する。引っ越しは大変だけれど、こういう強制的な「片づけ」の機会はありがたいのかもしれない。

 

約750冊の本を手放すことになった日。それぞれの本との出会いやそれにまつわる若かりし日の思い出に浸りながら、私たちはお互いにこれまでの人生を振り返っていた。それは切ないけれどもどこか清々しく、前向きに歩き出せるきっかけになってくれた気がするのだった。出会うべくして出会い、別れるべくして別れる本たちよ、ありがとう!