一筋の光、降り注ぐ光。

人生はなかなかに試練が多くて。7回転んでも8回起き上がるために、私に力をくれたモノたちを記録します。

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香らない薔薇なんて

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日本には、いったいどれほどのローズガーデンがあるのだろう。

 

薔薇の季節が訪れる度、落ち着かなくなる私である。行きたい薔薇園は数多くあれど、なかなか自由に飛んでいけない身。しかし、比較的近くにある馴染みの公園、久屋大通庭園フラリエで「ローズフェスタ」を開催中と聞き、小一時間ほどを過ごしてきた。

 

要するに薔薇市場が開かれていた訳だが、フレンチローズを中心に約1000株が集まった会場は華やかで見応えがあり、足を踏み入れた途端、心が躍った。

 

色はもちろん、花の大きさや形など、一言で薔薇と言っても本当に多種多様。皆それぞれに美しく優雅で、たくさんのお姫様にお会いしているかのようだった。

 

ところが、ふと、何か物足りなさを感じる。あれ?香りは?

 

ローズガーデンを訪れたときは、まずその場に漂う香りにうっとりとした覚えがあるのだが、今回はあまり香ってこない。いや、ほとんど感じない。

 

そう気づいてから、花に顔を近づけてクンクン。ちょっと恥ずかしかったけれど、あっちでクンクン、こっちでクンクンしてしまった私。わかったのは、香らない薔薇もあるということだった。

 

もちろん、どの花も全く香りがない訳ではないらしい。でも、全体に薄い。私にとっての薔薇とは、小さくても気品を感じる芳香があるものなのだ。色や姿形も大切だけれど、香らない薔薇なんて魅力を感じない。

 

よく考えると、切り花の薔薇もここ数年、香らないものが多かった気がする。だから先日夫に買ってもらった薔薇が、ライチなどのフルーツを思わせるとても素敵な香りを放ってくれたのが珍しくて嬉しくて、毎日顔を寄せて楽しんでいるのだ。スーパーの店先で見つけた小さな花束なのだけどね。

 

30年くらい前、1人暮らしの部屋に飾った1本の深紅の薔薇。それが私の原体験だ。仕事から帰って部屋に入ると、部屋中が高貴な香りに満たされていたという記憶がある。これって、思い出補正とやらをやらかしているのか?

 

実際、例えば百合の花ほどは、薔薇は強く香らない。それはわかる。しかし、何百本もの薔薇が密に咲き誇った場所で、こんなに香らないものなのだろうか?それとも私の鼻が鈍感になってしまったの?

 

さまざまなクエッションマークをまき散らしながら、そう広くもない会場を私は何周も歩き回った。望んでいた香りのある薔薇を見つけると、その商品カードを確かめる。「強香」とあることが多く、そのタイプも「ダマスク・クラシック」とか「ティー」とか「ミルラ」とか「フルーティ」とかいろいろあるようだ。なんて微妙な世界なんだろう。嗅ぎ分けられる人はすごいな!

 

でも、顔を近づけてようやく香る程度で、わざわざ「強香」と書くくらいだから、やはり薔薇には芳香があるのが当たり前、という考えは間違っていたのかもしれない。

 

年配の女性グループやご夫婦連れのお客さんが多かった会場。皆さん、結構詳しくて、薔薇に付いている名前から系統を辿っていたり、フランスの育種会社の評判を語り合っていたり。イングリッシュローズとかフレンチローズとかすらよくわかっていない私には、漏れ聞こえてくるお話に、「へえぇ、そうなんだー」と思うことばかりだった。

 

薔薇栽培の世界にも、きっと流行があるのだろうね。遠い昔に私が出会った薔薇たちは、もう作られていないのかもしれない。

 

小さなベランダがすでに混雑してきているので、私は薔薇の苗を買うつもりはなかった。でも、もしも買えるときがきたらどの薔薇を買おうかな、などと考えながら見て回るのも楽しくて。

 

私は赤い薔薇が好きだけれど、いろいろ見ているうちに、アプリコット色とか淡いピンク色もいいな、と思えてきたし、純白の薔薇も素敵だ。

 

ただ、どうしても香りははずせないな。わが庭で咲いてくれた薔薇の花に「おはよう」と声を掛けたとき、上品な芳香で挨拶を返してもらいたい。そうしてもらえたらどんなに素敵だろう、幸せな気持ちになるだろう、と憧れるから。そしていつか、薔薇の花の香りを嗅ぎ分けられるようにもなりたいな。

 

帰宅して、「香らない薔薇」で調べてみたら、アメリカバラ協会の会長が「香りのないバラは笑わぬ美人と同じ」と言ったとか、イギリス王立バラ協会の会長が「香りはバラの魂であり、香りのないバラは花ではない」と言ったとか、わが意を得たりの言葉を見つけた。

 

そうだよね!そうだよね!

 

私はやはり、香りのある薔薇がいい。庭に植えるのも、鉢で育てるのも、切り花であっても。そんな薔薇がもっと増えてくれればいいなあ。

 

立派なローズガーデンへ出かけずとも、この季節、あちこちのお庭や公園で薔薇たちに出会える。人目を気にしながらも、つい顔を近づけてクンクンしてしまう相変わらずの私である。近づけすぎて唇が花に付いてしまうことも。お姫様に捧げるkissといったところか。そのときの、少しひんやりとした花びらの感触も、実は大好きなのだった。

 

優しく甘やかな気分にさせてくれる、薔薇は素敵だ。それにしても、薔薇のことを考えているとワインが飲みたくなるのは、何故だろう?(笑)