一筋の光、降り注ぐ光。

人生はなかなかに試練が多くて。7回転んでも8回起き上がるために、私に力をくれたモノたちを記録します。

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娘に誘われ「お散歩デート」

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朝、窓を開けたときに「あ、秋の匂い」と感じる日が、毎年訪れる。10月に入って、今ぐらいの時期だ。それは、金木犀の香りに感じるウットリしたものでなく、ひんやりし始めた空気の、ちょっと緊張感のある匂い。胸が少し苦しくなるような、“あきらめ”を伴うような。

 

ずっと「なんでだろう?」と不思議に思っていたが、何年か前に、「ああ、これは運動会の朝の匂いがよみがえってきていたんだね」と気づいた。

 

小学生の頃は私、運動が得意ではなく、運動会はちっとも楽しみではなかった。全校生徒や保護者たちなど、大勢の人の前で走ったり踊ったりするのが恥ずかしく、楽しみどころか嫌いだった。だから、当日の朝、窓を開けて晴れ渡る青空を見上げ、ああついに今日が来ちゃった、なんてため息をついていたのだと思う。

 

そんな“秋の匂い”を感じる日が、今年も訪れた訳だが、嬉しいことに今年も無事、運動会に出場しなくて済んでいる。大人になって良かったことの、ひとつだね。

 

一番好きな季節は秋。そう言う人が多いみたい。うだるような暑さから解放されホッとするから、夏嫌いの私も秋は嫌いではない。でもやっぱり、秋ってなんだかちょっと緊張する。

 

一年も残りが3カ月ほどとなり、あれこれ「やっておかなきゃ」的なことが目についてきて、なまじ動ける気候だから欲も出てしまう。欲が出てくるわりには「そんなにいろんなこと、いっぺんにできないよ」と反発する自分もいて。「どうしても頑張らなきゃダメ?」なんてちょっとだけ、臨戦モード。大袈裟か。

 

スポーツの秋。読書の秋。芸術の秋。
行楽の秋。食欲の秋。実りの秋。
……etc.

 

あれをしよう、ここへ行こう、それも食べよう。
ネットでもTVでも新聞でもチラシでも、秋にまつわる惹句が踊っている。ジャック、踊り過ぎだよ。見てるだけで疲れるよ。

 

この夏を引きこもりがちに過ごした私にとっては、読書や芸術はともかく、アクティブな方の秋は例年以上に敷居が高い。ああ、想像しただけで緊張する。

 

そんな私を外に連れ出そうと思ったのか、連休中の一日、次女が「お散歩デート」に誘ってくれた。私の好きなフラリエという庭園公園で秋の草花を撮影し、彼女のお気に入りのカフェにも連れて行ってくれるらしい。

 

実は私、膝を痛めていて、整形外科のリハビリにもう2カ月半ほど通っている。長く歩き続けると痛くなってくるのでウォーキングには及び腰になっていたのだが。

 

娘と一緒なら休み休み歩かせてもらえるから、まずは気が楽だ。それに私は「趣味は散歩」と言っているくらい、本来歩くことは大好き。外での撮影もしたかったし、お洒落なカフェにも久し振りに行きたい。何より、娘からそんな誘いをしてくれたことが嬉しくて、嬉々として出掛けたのだった。

 

ここのところ週末ごとに台風に脅かされてきたが、この日は快晴。夏のように暑かった。日差しの強さには少々まいった。でも、空は高く深いブルー。あきらかに秋の青色。吹く風はサラッとしていて気持ちがいい。

 

フラリエには6つのテーマガーデンがあり、そこここに洒落たベンチが配され、色とりどりの花を愛でながら一息つくことができる。休日だがさほど混雑していなかったのも、ストレスがなくて良かった。手入れされた散歩道をゆっくり歩き、ときどき写真を撮る。他愛のないおしゃべりが、気持ちを晴れ晴れとさせてくれる。終始、ふたりで笑っていた。

 

次女は今、遠距離恋愛中だ。この先、カレとはどうなるか私にはわからないが、いつかは彼女も私たち夫婦のもとから巣立っていくだろう。その日はそう遠くないような気がする。4つ上の長女が結婚した24歳に、彼女ももうなっているし。

 

こんな風に「お散歩デート」してくれるのも、あと何回だろう。長女の結婚前も、一緒に暮らせる残された一日一日を、抱きしめるようにしていたなあ、と感傷的になる。今、という時間を大切にしたい。

 

散歩中、その長女から家族LINEにメッセージが届いた。1歳の娘(私にとっての孫娘)を抱っこして、ちょっと遠方の公園まで歩いていると言う。赤ちゃんを抱っこして歩くには、かなりキツイと思われる距離だし山道もあるのに。抱っこヒモの中で眠ってしまい、はてどうしたものかね、と苦笑している様子。

 

休日なのに、婿殿は今日も仕事らしい。行楽の季節、ひとりで赤ちゃんを抱いて遠くまで歩いてみようと思い立った娘の気持ちを思い、切なくなる。

 

「お母さんが、私が赤ちゃんのとき、ベビーカー押してすっごく遠くまで歩いてくれたって話を思い出して、私も頑張ってみた」と、泣かせることを言う長女。

 

近くに住んでいたら一緒に歩けたのになあ、と思う。思いながらも、こうしてLINEのおかげでリアルタイムで状況を交換できるのは、嬉しいことよね、と考え直す。お姉ちゃんが大好きな次女が、すかさず今撮ったばかりの写真を送る。

 

そのうち、仕事中の夫からもメッセージが入った。忙しすぎる男たちのことも心配だけど、機嫌よく仕事していてくれるようなら、少しは救われる。案じてくれる人がいる、案じたい人がいる、というのは幸せなことだよね、きっと。

 

脚はやっぱり少し痛くなったけれど、良い散歩だった。カフェのランチも美味しかったし、この後に行った出来たばかりの大型商業施設でも、次女の買い物に付き合えて楽しかった。夕方、仕事を終えた夫と合流し、久しぶりに3人揃って楽しんだ外での食事も、和やかで素敵な時間だった。

 

さて。連休が終わり、今日は丁寧にストレッチしながら、ひとりでのんびり過ごしている。あちこち散らかっているけど、片目をつぶる。掃除も明日でいいや。

 

疲れたら休む。体の声を聴き、メンテナンスする。そこを押さえておけば、多少の不具合があっても出不精を決め込むことはない。時々は、電車に乗ってお出掛けをしよう。

 

10月中にもうひとつ、次女とのイベントが待っている。それは今から楽しみで、体調を崩さないように備えておきたい。

 

あれもこれもと頑張らなくてもいいんだよ、と自分に言う。人と比べることもない。私は私のペースで、恵みの秋を楽しもう!