一筋の光、降り注ぐ光。

人生はなかなかに試練が多くて。7回転んでも8回起き上がるために、私に力をくれたモノたちを記録します。

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ようこそ、赤ちゃん

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母の日が終わり、5月も半分が過ぎようとしている。私の一番好きな月だ。悩みの深かった去年は気持ちに余裕がなく、十分に楽しめないまま5月が去ってしまった。しかし、今年は忙しいなりにこの美しい季節を心から堪能している。ありがたいことだ。

 

長女が第一子を出産して、1か月がたった。

 

予定日より半月ほど早く、破水して入院したと聞いて心配したのだが、母子ともに無事。生まれてきたのは元気な女の子。みんなが幸せをもらった。出産した日、クルマで4時間半の距離を飛ばし、夫と共にとんぼ返りで娘夫婦と赤ちゃんに会ってきた。

 

新生児を抱っこするのは何十年ぶりのことか。生まれたての赤ん坊はフワフワで頼りなく、とにかく小さくて。それにしても、本当になんて愛らしいものなんだろう。

 

そして、見てる間にもこの世界に順応していく様子がわかる。ほんの数時間、病院の個室で一緒に過ごしただけなのに、瞼の腫れがひいていき、頭の形が丸くなってくる。肌も艶が出てきたようだ。猛烈な勢いで細胞分裂しているんだね。人間って、生命って、すごいなあ。

 

娘は里帰り出産ではなかったので、私が娘の所へ手伝いに行くことになっていたのだが、ちょうどこの時期、私にはインタビューの仕事が2日続けて入っていた。取材準備やら旅支度やら時間のやり繰りにハラハラしたが、取材の済んだ翌日、退院の日に駆けつけて、そのまま10日間、娘の手伝いをしてくることができた。

 

初めての町、初めて入る娘たちの家。勝手のわからぬまま睡眠不足でスタートする家事、そして久々の赤ちゃんのお世話。幸せな出来事とはいえ、私にとっても試練の日々ではあった。原稿も書かなくてはいけなかったし。

 

それでも、得難い経験のできた大切な日々だ。娘が結婚して以来、こんなに長い時間を彼女と一緒に過ごすのは初めてだったし、もちろん婿どのとも。数日だけどネコちゃんと暮らすのも初めてだった。ネコちゃんにしてみれば、いきなり小さいのと大きいのが自分の家にやって来て、さぞ当惑したに違いない。

 

娘たちが住んでいるのは、住宅街ではあるけれど、自然を身近に感じることのできる町だった。窓の外には新緑の山々が連なり、見知らぬ野鳥が美しいさえずりを聞かせてくれた。春爛漫。家々の庭には色とりどりの花が咲き乱れており、買い物に出掛けるのも楽しい気分だった。

 

そうそう、隣の市に住む私の友人が、お祝いを持って会いに来てくれたのも本当に嬉しかった。彼女の明るく優しい笑顔を見て、疲れが吹き飛ぶような気がした。少しの時間だったけれど、ランチや観光にも付き合ってくれて、私の滞在にとびきり素敵な思い出を加えていただけたと感謝している。

 

さて、娘にとって初めての子育て。そりゃあ、大変だよね。心配していたが、赤ちゃんのお世話にまだ慣れない彼女が、日を追うごとにお母さんらしくなっていく姿を、この目で見させてもらった。

 

抱っこすれば泣き止むけど、寝かせるとまた泣き出す。これが一晩中続くこともある。なかなか寝てくれないとため息をつき、眠り続ければそれはそれで心配になる。ミルクをゴクゴク飲めば、まだ母乳が足りていないのかと切なくなり、ミルクを飲まなければ、それならなぜ泣き続けるのかと困惑する。

 

抱っこ、オムツ、おっぱいで日が過ぎてゆき、母親はまとまった睡眠をとることができない。赤ちゃんが寝ている隙に一緒に寝ればいいのに、スヤスヤ眠るその寝顔に見とれてしまい、身動きがとれなくなる。可愛すぎる。なんという罪深さだ。

 

わかるわかる。私もそうだった。

 

赤ちゃんだった長女は私を悩ませ、そのくせ私を一番幸せにしてくれたっけ。悩みの原因に慰められている自分を面白がっていた、遠い昔。

 

よく「孫は特別可愛い」と聞くが、私にはまだ実感はない。もちろん赤ちゃんはとてもとても可愛いが、私には赤ちゃん以上に、娘が愛おしかった。あの赤ちゃんが成長し、今、母になっている。

 

26年前、私の母もこんな風に私を見ていたのかな。当時は自分のことだけで精一杯で、母の気持ちまで推し量る余裕なんてなかったな、と申し訳ない気持ちになる。私は、母が私にしてくれたことの数分の一も、娘にしてあげられなかったよ。スミマセン!

 

1週間が過ぎた頃、娘の産後の回復も順調だったので、いつ帰ろうかとタイミングを探っていた。原稿の仕上げは家でしたかったし、実は締め切りを早めたいと電話もあったのだ。ちょうどゴールデンウィークで、婿どのがカレンダー通り休めそうなこと、娘も沐浴を一人でできるようになったことなど、安心材料が揃ってきたところへ、夫と次女がクルマで来てくれたので、その日の夕方、私も一緒に乗って帰ったのだった。明日からは、夫婦二人で力を合わせて頑張ってね、と。ちょっと後ろ髪を引かれつつ。

 

さてさて。怒涛のような日々が、先週末になってようやく落ち着いた。原稿も手持ち分はすべて書き終わったし、その他の用事も大きなものは一通り済んだ。久々に本を読んだり映画を観たりしている。ふと目を上げると、ベランダにゼラニウムの赤い花。頑張ったことへのご褒美のように、綺麗に咲いてくれている。

 

正直言って、私はバリバリ忙しくするのは好きじゃない。そういうタイプではないし、疲れやすい性質だし、もうそんなに若くはないし。特に初めてのことが重なったり、情報が多すぎて脳内処理が大変だったりすると、これまでは大抵、一連のことが終わった途端、倒れるか寝込むかしていた。

 

でも、今回は心が穏やかだ。倒れてないし寝込んでない。

 

毎日のように長女から送られてくるコメントと、ベイビーの写真のおかげかもしれない。たくさんの労いの言葉を掛けてくれた夫と次女のおかげかもしれない。多忙の中で書き、掲載された原稿を、認めてもらったり褒めてもらったりしたからかも。そしてゼラニウムの赤い色のおかげもあるかも。

 

もちろん全部だろう。その上で何よりも心を落ち着かせてくれたのは、電話で母に心からの「ありがとう」を言えたことなんじゃないだろうか。私が「お母さんの大変さが今になってわかったよ」と興奮気味に話した体験談に、母が声を立てて笑ってくれた。その声の明るさ。これまでで一番、良い母の日だったと思う。

 

赤ちゃん、サンキュー♪

 

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