一筋の光、降り注ぐ光。

人生はなかなかに試練が多くて。7回転んでも8回起き上がるために、私に力をくれたモノたちを記録します。

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初々しい歌唱に涙―西城秀樹さんのデビュー時からのアルバム復刻

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デスクに置いたハンディ扇風機を付けると「恋の暴走」のイントロが脳内再生される。ドライヤーをスイッチオンすると「若き獅子たち」だ。いつからか、動作音がそう聞こえてしまうようになっている。

 

この3年間、どれだけ西城秀樹さんの歌を聴いてきたことだろう。すっかり耳がHIDEKI受信機になってる?我ながら可笑しいけど、悪くない気分である。

 

訃報の後、ファンに戻ったことを自覚して、その後、動揺と混乱の時期を乗り越え、今は気持ちが落ち着いている。時々は、不意打ちのように歌が沁みてきて、視界がにじむこともあるけれど・・・

 

人の言動に惑わされず自分のペースで「推し」を推すことも、できるようになってきた。つまり、お金や時間のかけ方だとか、SNS時代のファン同士の繋がり加減だとか、そういうことで無理しない、悩まないでいられるようになってきた、ということ。

 

どの世界にも難しいことはあるね。作法もある。同じ人が好きだからみんな仲良し、って訳にはいかないことくらいはわかっていたが、トラブルを見ると嫌な気持ちになったし、ヒエラルキーの匂いには近づきたくなかった。

 

私、「推し」ってこれまで長いことなかったから、どうしていいかわからなかったのだ。しかも推したい彼は、空の上の住人になってしまっているし。混乱するよ。

 

でも、いろいろ思って考えて、今はもう大丈夫。勉強させてもらった。笑

 


さて。西城秀樹さんについてはこれまで何度かここに書いてきて、もう自分の気持ちは安定して整理もできてきたから、これ以上は書くこともないかな、と思っていたのだが、またひとつ記録しておきたいことができ、こうして書いている。

 

1972年3月25日にシングル「恋する季節」でデビューした西城さん。当時まだ16歳。今年はデビュー50周年の記念すべき年となる。さまざまな企画があるようで、HIDEKI喜んでるかな?と思うと、私も嬉しくなる。

 

先々月のこととなるが、彼のお誕生日、4月13日には、2時間を超えるライヴ映像配信、HIDEKI SAIJO CONCERT 2005「Second Birthday」を視聴した。一度も彼のコンサートに行けなかった私には、これがお初となる。感慨もひとしお。PCの前に張り付いて、50歳の彼をしっかり見せていただいた。

 

そしてその後、西城さんのデビュー時からのオリジナルアルバム、ライブアルバム、カバーアルバムが復刻発売されることになったと聞いたときは、小躍りした。

 

www.110107.com

 

オリジナルマスターテープを最新デジタルマスタリング。総数50枚以上を2年間にわたり発売していくという。

 

第1弾の発売は6月18日。1972年から1975年までの名盤、5タイトルだ。私がファンだった頃と重なるので、どうしても手元に置きたいと願った。思春期の自分が「買って!」と叫んだよ。笑

 

世は、サブスク高音質配信の時代になってきているというのに、半世紀前のLPレコードの復刻CDを、まとめて5枚、私は一瞬の迷いもなく予約したのだ。

 

 ・・・なるべくモノは持ちたくない、
 なんて、どの口が言う?
 でも、これは特別だから!
 多分、この後は2,3枚買うだけだから・・・
 多分・・・

 

とにかく、予約しておいて良かった。ソニー・ミュージックでは発売日の翌日に、5枚セット(限定特典付き)はSOLD OUTになったらしい。(1枚づつなら買えるようだ)

 

◆ファーストアルバム「ワイルドな17才」(1972年11月)
◆「青春に賭けよう」(1973年3月)
◆「エキサイティング秀樹」(1973年10月)
◆「傷だらけのローラ」(1974年9月)
◆「恋の暴走/この愛のときめき~エキサイティング秀樹Vol.5」(1975年6月)

 

オリジナルをミニチュアにしたような、紙製のジャケットが泣かせる。その脇のポケットから半透明の袋に入ったCDが出てくるのだ。

 

そうそう、レコードってこんな風に取り出したんだよねと、すっかりプラのCDケースに慣れてしまっていた私は、懐かしさにやられた。

 

3年前の訃報後に、HIDEKIのCDやDVDはBOXも含めいろいろ購入してきたけど、当時のオリジナルアルバムの復刻というのは、また別物なのだった。あの頃、擦り切れるほど聴いたLPには、思い入れのある曲がいくつもある。

 

お小遣いを貯めて、あるいはお年玉を握りしめて、レコード屋さんに向かった中学生の私には、欲しくてもHIDEKIのアルバム全部は買えなかった。こんな風に、5枚まとめて大人買いするウン十年後の自分がいることを、あの子は知らない。待っててね、そのうちあの「西城秀樹ロックの世界」も発売されたら買うから!(このLPは一番のお気に入りだったのに、友達に貸したら返ってこなかったの。中学卒業後、音信不通で)

 


そして、である。
HIDEKIのデビュー当時の声と歌唱に、まあ、なんで私が照れるのか。笑
あの大スターにも、こんな時期があった。本当に初々しくて、とにかく一生懸命で、ひたすら可愛いのだ。

 

研ぎ澄まされた歌唱の技を自由自在に使い分け、聴く人を魅了してきた西城秀樹さん。その素晴らしい歌唱力の、ここが原型なのかと、ダイヤモンドの原石を見る思いだ。

 

「美・ブラート」と誰かが言っていた、あの綺麗なビブラート唱法はまだ完成されていないが、そこここに片鱗をうかがうことができる。(特に5枚目。「さよならの宿命」「夕やけ雲」「悲しき誕生日」など。20歳になるかならないかの時期だけど、声の抜き方、ファルセットの入れ方にも、馴染みあるヒデキ節が見え隠れ)

 

デビュー前、厳しい歌のレッスンも必死に頑張ったと聞いた。「ア・イ・ウ・エ・オ」がはっきり通る、大きく口を開けた発声が、いかにも正統で好ましい。そこにロックの素養が入るから、ちょっとこなれて洒落た感じになる。巻き舌になるラ行が楽しい。

 

HIDEKIは初期の頃、絶叫型とよく言われていたけど、囁くような歌い方も印象的。一語一語、繊細に優しく、気持ちを込めて感情に訴えてくる。そして一転、叩きつけるように嘆き悲しむ。水泳をしていて肺活量がすごかったそうなので、迫力が違う。

 

強弱をつけてドラマティックに歌い上げるのが、HIDEKIのスタイルだった。今なら「エモイ」というのかな、エモーショナルとはまさに、当時の彼の歌唱法のためにあるような言葉だと思う。

 

ただ、アルバムにはとてもライトでポップな楽曲も多く入っていて、少年らしい明るさのある、軽快でコミカルな歌声も、充分楽しませてくれる。

 

HIDEKIはそもそも、声がいい。

 

単純に「ハスキー」と言ってしまうには、魅力的すぎる声。温かみがあり、カラーで言えば寒色でなく暖色。ザラッとした手触りを感じる、癒しのある親しめる声。シャウトにも、濁しただみ声的な表現にも、しゃくりにも親和性があり、無理がなく自然。HIDEKIが歌うと、歌が複雑味を帯びカラフルになる。

 

ここからどんどん磨きがかかって、日本が誇る素晴らしいトップ・ヴォーカリストになっていくんだね。その成長過程を、アルバムを通して感じ取っていくのも、楽しみ方のひとつだろう。

 

歌声や歌唱法について全く不案内な私なので、専門的な用語も知らずもどかしいけど、この3年間ずっと彼の歌を聴きながら、なぜこんなに惹きつけられるんだろう、この声のどういうところに魔力があるんだろうと、何度も言葉を探してきた。それで、この機会に文字にしてみたのだが、素人の考察・感想なのでそこは悪しからず。

 

今回購入したのは、一番好きだった頃のアルバム。だから、当時の西城さんのルックスやTVで見たアクションも、思い浮かべながら聴くことは容易だった。でもそれは頭の中のこと。音源だけだと、映像を伴うものと違って彼の見た目に惑わされず(笑)、耳に全集中でき、しっかり歌が聴けるという良さもある。

 

ただ意外だったのは、懐かしく楽しい気持ちになるんだろうなと思いきや、徐々に切なく苦しくなってしまったことだ。

 

「こんなに可愛かったんだ」と、いかにも少年な声に愛おしさが募って、悲しくなってきた。ひたむきさが伝わってくるほどに、ずっと応援し続けられなかったことが後ろめたく思えて。

 

数年で離れてしまった申し訳なさ。あの頃だって、なんで親を説得してでもコンサートに行かなかったんだろうとか、彼が天国に旅立ってからノコノコと戻ってくるなんてどうなのとか、自分を責め始める。

 

でも。
そんなさまざまな、数々の、どうしようもない気持ちは、やがて「ありがとう」という一言に収束していった。

 

後に偉大なシンガーとなるひとりの男性の、歌手としての始まりを見せてもらえた感謝。歌で幸せな気持ちにさせてもらえたことへの感謝。10代からの各年代の彼の歌唱を、今もこれからも好きなときに聴くことができる、そんな贅沢過ぎるほどの宝物を、残してくれたことへの感謝。

 

私はこれからもきっと、ずっと西城秀樹さんの歌を聴いていくんだろうな。

 


✻西城秀樹さんについてこれまでに書いたものはこちらです↓

tsukikana.hatenablog.com

 


✻西城秀樹さんのオフィシャルサイト↓

www.earth-corp.co.jp

✻とってもカッコいいサイトを見つけました↓

https://www.hidekisaijo.com/

 

 

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