習い事。ならいごと。
定義はよくわからないけど、これまで習い事らしい習い事って私、したことがなかった気がする。
子どもの頃、親に言われてちょっとだけ行ったオルガン教室。それとお習字と英会話教室。ほんと、ちょっとだけ。そんなものも、習い事と言えるのだろうか。
学校を出て就職で上京、3年後に転職して。その頃、スキューバダイビングの教室に半年くらい通った。
結婚して子どもを生んで。ママ友に誘われて行ったエアロビクスは7年続いたけど、あれを習い事と言うのも憚られる。
1年半ほどワイン講座にも通ったし、イラストやお料理の1dayレッスンやワークショップ的なものには、ひと頃よく出向いた気がする。
でも・・・
もしも、級を進めたりお免状みたいなものをいただくのを目的とするのが習い事なら、私のはあきらかに違う。スキューバも免許取るまではいかなかったし、エアロもインストラクターを目指さなかった。ワイン講座ではワインエキスパート資格を取ろうと勉強に来ている人もいたけど、私はワインの知識を少し深めたかっただけ。友だちもできて楽しかったから続けただけ。全部、遊びだ。いや、遊びで良いって思ってるけどね。
実は前に新聞社系の文化教室で、講座運営の仕事をしていたことがある。世の中にはおびただしい数の習い事があることを知り、多岐にわたる仕事に忙殺される日々だった。リスペクトする講師もいたし、社員価格で受講もできたのだけど、自分もそこで何かを習おうとは、あの頃、全く思わなかった。ちょっと病んでたからかな。
そんな私が、通信講座で刺しゅうを習うことにした。資格も取りたいと思った。去年のことである。
コロナ禍を経て、“対面なし”の習い事が以前より増えたのだろう、ネットでも広告をよく見かけるようになった。そういうもののひとつに、公益財団法人 日本手芸普及協会 の刺しゅう講座があったのだ。
私は昔から刺しゅうが好きなので、この広告は目にとまった。でも、「資格取得可」という謳い文句には「?」と。刺しゅうの資格を取るって、何だろう? 刺しゅうに資格なんてあるの?
カリキュラムステップの説明ページを見ると、「本科」「高等科」を卒業して「講師科」の課題をクリアすると、講師の資格が得られるらしい。希望すれば「講師認定証」が与えられる(有料)。要するに、教室を開いたりするときに“お墨付き”になるってことかな。いろいろサポートもあるらしい。
最初のうちは、ふーん、と眺めていただけだったのに、だんだん気になって仕方なくなってきた。別に刺しゅうの先生になりたかったわけではない。でも、刺しゅうのことを、もっと勉強してみたい気持ちは潜在的にあった。
待てよ・・・そうか。資格を取るという目的があれば、単に刺しゅうを楽しむだけでなく、上達しようと頑張ることができそうだ。おっ、頑張る私を見てみたいぞ、なんてね。私、思ってしまったのだ。上手になりたいし、力を試してもみたい、そんな気持ちが膨らんだ。
このブログでも、刺しゅうのことは何度か書いている。何十年ぶりかで刺しゅうにはまってるよ、みたいなことを書いたのは7年前だ。
ここでもチラリと触れているが、私は短大で被服を専攻していたので、洋裁や和裁とともに刺しゅうも学んだ。そのときに、たくさんの美しい刺しゅう糸を買い揃えたため、機会があればまた刺しゅうをしたいと思っていた。そして、7年前くらいから時折り楽しむことができるようになって、何か刺すたびにやっぱり刺しゅうって良いなあと感じてきた。
数年前から刺し子に心奪われていたが、刺しゅう(フランス刺しゅう)も変わらず好き。YouTubeでステッチを刺している動画を見ると、まるで魔法みたいでいつも見惚れてしまう。きっとセロトニンが大量に分泌されるのだろう、うっとり幸せな気分になり、睡眠導入剤がわりにしていた時期もあった。笑
刺しゅう作家さんたちの美しい作品を図案集やSNSで眺めたり、自分でちょっと小さいものを刺してみたり。私と刺しゅうはそういう仲で、これからもずっとそうなんだろうなと、思っていた。
けれども、刺しゅう講座のことを調べているうちに、もっと深い仲になってもいいかもね、なんて思ってしまい、実はそんな自分にドキドキしてしまった。え?資格?私って、本当に資格が欲しいの?
それから何か月も迷い続けた。習わなくても、独学でだって刺しゅうは学べる。そもそも資格って、欲しいかどうかわかんない人が目指すべきものじゃないのでは?とか。もちろん、習い事なので費用もかかる。リターン求めて真剣に頑張るほどの覚悟が自分にあるのか?とまで考えたり。
でも。
だんだんそんなことはどうでも良いような気がしてきた。やりたいんなら、やればいい。
自分の年齢のことも考えた。先生について学んでみようと思えることって、この先そんなに多くない気もして、ちょっとハッとする。だったら、こんなふうに気になった刺しゅうを、これまでも好きだった刺しゅうを、きちんとしたメソッドのもとに学んでみようかな、と。どうせやるなら、資格取得を目指そうかな、と。ようやく決心が固まった。半年くらいかかった。笑
通える距離にヴォーグ学園があり、そこで対面で受講することもできたが、私はスマホで学べる通信講座を選んだ。アプリをダウンロードし、担当の先生が決まる。全てが初めてのことで不安だったけど、すごくワクワクした。
そして、テキストを読み、動画を見て、課題に取り組み、写真を撮って提出し、先生の添削を待つ。そんな習い事の日々が始まった。
控えめに言って・・・すごく楽しかった!
褒め上手のK先生に乗せられてる感はあったけど、自分が頑張ったところをわかってもらう、褒めてもらうというのは、こんなにも嬉しいものなのかと驚いた。先生からのコメントは、いつもキラキラ輝いて見えた。
もちろん、厳しくジャッジもされる。手を抜いたところはやんわりと「やり直し」を申しつけられる。笑
でも、そんなことも楽しい。先生からのアドバイスや動画で教えてくれるポイントを参考にトライし、自分の技術が上達していくのが目に見えてわかる。それは本当に嬉しいものだった。
なまじ、刺しゅうの経験があるばっかりに、正直、学び直し気分でもあった私。そのあたりは甘かったなあと思う。
正しいと思い込んでた基本的なやり方が、実は大間違いだったりしてビックリ。いつの間にか変なクセがついてしまってることにも気付く。いやいや楽勝でしょう、なんて思いあがってたかも?と、なんだか恥ずかしくなり、ぺしゃんと落ち込む。でも、気持ちを立て直して練習して、また新たな自信につながる。そんな経験もできた。
課題に取り組みながら、何度も頭をよぎった言葉がある。「習得の喜び」だ。
習い事の本質は多分、ここにある。資格とか、リターンとか、そういうことの前に。
私の受講した「ステッチ100」というコースは、その名の通り、100種以上のステッチを学ぶ。これまで20個くらいしか知らなかった私にとって、初めましてのステッチが山のように聳えていた。
最初、上手く刺せなかったそれらを、とても素敵に刺せるようになったときの高揚感といったら。その上、先生から「素晴らしいです」と言ってもらえたときの幸福感。安心感。これはもう、独学では得られないものなのだろう。
好きなものだけ刺していたら絶対手を出さないような、そんな図案もあったし、手法もあって。それが経験できたのもこの講座を受講したからこそだと思い、それを面白がり楽しむこともできた。
もうやめたい。なんて思うことは一度もなかった。刺しゅうの奥深さに触れ、ますます刺しゅうが好きになった。本当に楽しかったし、夢中だったと思う。
ただ、忙しかったなあ。不安になることもあったし。
特に、講師科の4つ目の(最後の)課題は、デザインを提出してOKをもらってから、完成するまで途中提出はなかった。オリジナルデザインだからお手本もないわけで、糸色、糸の本数、選ぶステッチ。全てにおいて悩み、迷った。ちっとも進まない。いつ仕上がるんだろうと時に焦って、「今日はここまで」となかなか針が置けない。
そして、なんだかすごく孤独を感じた。対面の受講だったら、この孤独はなかったのかもしれない。だからこそ、作品が完成したときの喜びは大きかったのだけど・・・
K先生の「応援してます」というコメント文字を、お守りにして頑張った。笑
受講している間は、課題を進めることが優先。他にも自分の好みのものを刺しゅうしたかったし、刺し子もしたかったけれど、そこはかなり我慢したかも。他のことも、いろいろ後回しにしてきた。自分の中でなぜか「最短で卒業したい」という思いがあり、ちょっと寝不足も続いたっけ。まあ、習い事初心者なので、仕方ないね?笑
去年の10月にスタートした刺しゅう講座。本科、高等科と進み、今年の10月に講師科の最後の課題をクリアでき、先月無事、講師認定証もいただいた。先生は、更に上のコースへ進級することも検討して、とおっしゃってくださり嬉しかったけど・・・。でも、それは少し考えてから決めようと思う。
課題を進めている間に、いろいろ浮かんだアイディア、デザイン。試してみたいことなどなど・・・
これからしばらくは、それらに命を与えることに時間を使ってみたい。少しは技術も上がったはずだから、うん、楽しみだ。
結構長く刺しゅうと付き合ってきたつもりだったんだけど、なんだかまだまだ“恋の始まり”みたいな気分なのですよね。
もう、苦笑しかない。でも楽しい♬
✻7年前、刺しゅう再開のきっかけになったのは、桜井一恵先生の図案集でした。そして、講師科の3つ目の課題がフリー刺しゅうで、冒頭の写真がその作品(後ろに見えるのは桜井先生のご本)なのですが、これ、桜井先生の図案じゃないかな、と思うのです(どなたの図案かは、テキストに書かれていません)。多分、きっと・・・
この作品を刺している間中、とても満たされた気持ちでした。ご縁というか巡り合わせというか、なんとなく導かれているようにも感じ、不思議な気持ちになります(*^^*)
✻刺し子ブログも書いています(*^^*)↓
✻インスタもやってます(のんびりと)↓
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