我が家は東向きに掃き出し窓が2か所あり、晴れた朝はここからサンサンと日光が注がれる。冬はありがたいのだが、夏は大変だ。
遮光カーテンを通しても輻射熱が部屋に伝わってくる。外側にオーニングを取り付けたいと、夏が来るたび毎年思い、そして毎年諦める。サッシも外壁も、対応できそうにないから。
苦手な夏。
まだ当分、猛暑が続くらしい。もう、息も絶え絶えなんですけど。
ベランダの植物たちに水遣りをするとき、私はツバの広い麦わら帽子をかぶる。それから、洗濯物を干すときは、黒いサングラスをかける。
出勤する夫をこのベランダから見送るときは、帽子とサングラスを両方着用することもある。自分では往年のハリウッド女優みたいでしょ、くらいに思っているが、見上げた夫は苦笑する。その恰好で手を振らないで、恥ずかしいから、という顔。笑
ああ、ありがたいな。
こんな風に、のんきに日々を過ごせているのは、なんてありがたいことだろう。今、この瞬間、大変な思いをしている人が大勢いることを考えると、申し訳ないくらいだ。暑いのやだーなんて、ぼやいている場合じゃないね。
毎朝のニュースで、今日も世の中は大変だと知らされる。感染の拡大、ウクライナの戦況、豪雨被害、地震、熱中症・・・本当に毎日、重たい話がてんこ盛り。何もしていない私なのに、聞いたり読んだりしているだけで疲れてしまう。
今も、昔も、そしてきっとこの先も。
世の中は常に大変だ。
限られた時間を限られた場所で生きている、限られた能力しかない私には、その全てに関わり解決に向けて協力するなんてことは、土台無理な話である。それでも、今その場所で頑張っている人たちを想い、気持ちを寄せて考えることはできる。何の役にも立たないが、それくらいは。
本当は、頑張る、という言葉はあまり好きじゃない。
頑張らざるをえず頑張っている人たちには、リスペクトしかないけど。頑張りたくて頑張っている人たちも、それで良いと思うけど。
頑張らなくても、誰もがのんきに生きていける世の中がいいな。それが本来目指すべき、世の中の姿なのではないかな。
頑張ることを強要したりするのは論外で、のんきに過ごしている人のことを責めたりもしないでほしいのだ。手元の新聞。昨日発足した第2次岸田改造内閣の面々を見ながら、無駄につぶやく。頼みますよ、と。無駄に。
8月は、広島、長崎の原爆記念日、そして終戦記念日と続き、戦争について考える機会が多い。大事なことだけど、少しだけ気が滅入る。重たい話が多いからね。
でも、その重さを感じながら、気が滅入りながらも、気持ちを寄せて考えようとする自分には、実はちょっと安堵する。人を励ませなくても、その重さをほんの僅かだけでも引き受けようとするマインドが、私にはまだ辛うじてあるようだ。
こうして、今年も8月が過ぎてゆく。ちょっとハッカみたいな香りの、風を感じながら。
ベランダのハーブたち。
しおれかけているようでも、水遣りをすると数分でシャキッと立ち上がる。それを見るのが好きだ。か弱くて、でもたくましい！
派手な美しさも、ずば抜けた栄養もない彼らは、しかし控えめに芳香を放ち、人の心を和らげてくれる。ちゃんと活用すれば防虫や家の清潔、人の美容や健康にも穏やかに役立ってくれる。
偉いな、ハーブ。
ハーブを見習いたい。笑
夜、月が出てるかな？とベランダに出るときも、私はハーブに触る。ローズゼラニウム、アップルミント、レモンバームは、私はお茶を飲む習慣がないので活躍してもらう場が少ないのだけど、葉っぱをこすった指先に残った香りを、毎日のように楽しませてもらっている。爽やかで、頭がスッとする。気持ちが前向きになる。
そうだ。今日は久しぶりに、料理にハーブを使ってみようかな。夏野菜をローズマリーと一緒に煮てみる？チャイブを刻んでパスタサラダに加える？
不思議だけど、ハーブをちょっと足すだけで、料理がワンランク上がるようだ。そして、ハーブをちょっと足そうと思った途端、料理の娯楽性が増して、楽しさがグンと上がる気がする。
体調は実はあまり芳しくなく、日常のあれやこれやで気忙しさはあるものの、私は8月をのんきに過ごせている。ありがたいことに。
今は何の役にも立っていないけど、いつかは何かのお役に立てることがあるかもしれないと、日々のニュースに胸を痛めつつ、密かに心構えを育ててもいる。
そして、身の回りのささやかなものを愛して生きることが、きっと巡り巡って世の中に役立っていくはずだと勝手に信じて、今日もベランダで、ハーブに水遣りをする私なのだった。
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