一筋の光、降り注ぐ光。

人生はなかなかに試練が多くて。7回転んでも8回起き上がるために、私に力をくれたモノたちを記録します。

<当ブログではアフィリエイト広告を利用しています>


春の気分を刺しゅうに込めて

f:id:tsukikana:20180226165927j:plain

 

川を渡る早春の風は冷たいが、ほのかに甘い香りがする。草木や土から漂い出る匂いも、もう冬のそれではない。

 

ケーキ屋さんやお花屋さん、雑貨屋さんやカフェのショーケース…。バレンタインデーや雛祭り、ホワイトデーと続くこの時期は、街を歩いていても、とびきり明るい色が目を楽しませてくれる。イチゴの赤やガーベラのピンクなど、部屋に持ち帰りたいものばかりだ。

 

そんな春気分を刺しゅうに込めてみた。今回は、フレーム付きのキットを使って。青木和子さんの図案は、前から一度試してみたかったので、購入した帰り道から気が逸り、ワクワクして頬が緩んでしまった。

 

キットには下絵が印刷された布と必要な刺しゅう糸、針や糸通しまで入っている。下絵を写し取ったり糸の色を揃えたりの準備が不要なので、即、作業に取り掛かれるのが嬉しい。

 

そしてこのキットでは、布裏に最初に接着芯を貼り付けるので、刺しゅう枠を使わない。ふむふむ、そういう方法があったのか。

 

刺しゅう枠を使うときは、経糸横糸がゆがまないように布を張ることが大事で、これがなかなか手間だったりする。また、枠をずらして別の場所を刺すとき、前に刺した刺しゅう糸の上に枠をはめなければならないときがあり、気を遣う。

 

接着芯だと、そんな苦労から解放されるし、最後の糸始末のときも、布と接着芯の間に糸端を隠せて便利だ。ただ、刺しゅうしているときの摩擦は、布だけのときに比べてはるかに大きく、刺しているうちに糸が摩耗していくのは気になった。

 

それにしても、刺しゅう作家さんの絵心は素晴らしいな。いろいろな人の図案を見ては、刺しゅうの表現力の奥深さに驚くばかりだ。

 

去年、本を買った桜井一恵さんの図案も大好きだが、青木和子さんのものも、とても好みである。庭の草花をさらっとデッサンしたようなものが特にいい。さらっと、と言っても、なかなか細かく再現されていて、ステッチの種類も結構多いのだ。

 

私は小花の花びらなどによく使われる「レゼーデイジーステッチ」とか、花芯や蕾を表すことの多い「フレンチナッツステッチ」などが好きだが、間隔を詰めて面を埋めていく「サテンステッチ」が苦手。その名のようにサテン生地を織るかのごとく、糸を捩らせないことが艶よく美しく仕上げるコツだとわかっていても、私は針の持ち方が悪いのか、すぐに糸が捩れてしまうのだ。

 

でも、今回は丁寧に、諦めずにやってみた。もっとも刺す面が小さかったから頑張れたのかもしれない。それから、以前、TVの手芸番組に出演していた青木和子さんが仰っていた、もうひとつのコツを思い出して、上手くいくかもしれない、と思えたのだ。

 

それは、まず面の一番幅の広いところに1ステッチ、糸を渡すという方法。端から順番に埋めていくのではなく、真ん中をしっかりキープしてから両脇半分づつ、埋めていけばいい。なんだか、安心して刺していける。サテンステッチが、好きになった。

 

また、スパイダー・ウェブ・ローズステッチというのを、(多分)初めて刺してみたのだが、思ったより簡単で仕上がりも可愛くて気に入った。糸を引くとき、引き過ぎないことが大事で、これはどのステッチでもそうなのだが、「ふんわり感」が命!って感じなのだ。

 

刺しゅうは色を楽しみながら作業できるのも楽しい。今回のものは約14×29cmの小さな刺しゅうだが、グリーン系だけで5種の色を使っていて、ちょうど多色セットの色鉛筆を使って絵を描いている感覚に似ている。

 

仕上がるまで、静かな時間が流れていき、穏やかな幸福感に包まれていることに気がつく。手先を動かし、きれいな色を見つめていると、悪いことは考えなくなるみたいだ。

 

一針一針に真心を込めて、これをプレゼントする予定の、私の大切な人のことを考える。

 

春が来る嬉しさ、花や緑の愛おしさ。明るく優しい心の芽が、のびのびと育っていきますように。

 

もうすぐ初節句を迎えるその人に、私のそんな願いが届くといいなあ。